戦後80年を顧みて、日米文化や言語の違いをあれこれ思うこと:「馬の口から直接得た情報」を借りながら

 今年、令和7 (2025) 年8月15日は、太平洋戦争が終わり、戦後80年になり、あれこれと反省してみる機会でもあります。なんと私も年末までには95歳になり、戦後80年間の35年間を日本、45年間をアメリカで  生活しましたが、日本とアメリカを主に「言語教育を通して」住み分けてきた経験から、私の書くことは、必然的に日米文化や言語の比較になることが多いのですが、今まで94年間生きてきて、読者の皆さんにとって、何らかの 参考になることがあれば幸いと思い本書を執筆することにしました。筆者の具体的な日米大学教育の職歴は巻末の略歴をご覧ください。

 筆者自身が日ごろ疑念を覚えたり、役にたったり、効果が上がったり、失敗したりしたことなどについて触れることにしたのが本書です。筆者の経験上からも、異文化比較、教育制度、英語教育、子育て問題などに関するいろいろな事柄について、あれこれと触れてみることにしました。本書は、1つの分野に関することを纏めたものではなく、筆者が日常生活で実際に経験した、いろいろな分野の事柄を取り上げ、No.1の13項目の「自己紹介」を除いて、No.2 からNo.16にそれぞれ12項目を筆者が思いつくままの順不同で紹介しました。読者の皆さんには、本書のどのページからでも気軽にお読み頂ければ幸いです。

 たしかに、世界中がインターネットで結ばれている現代では、知りたいことがあれば、インターネットで検索すれば、たいていの情報が得られます。しかし、その反面、情報量が多すぎて、果たしてどの情報を参考にしてよいのか迷うことがあります。その上、情報が必ずしも正しいものであるとは限りません。その証拠に、各人がそれぞれの専門分野で自分自身に適切な知識がある場合には、その分野に関することなら、全てとは言わなくとも、どの情報が正しいのか、少なくとも大よその検討がつきますが、他の分野のことに関しては、情報の優劣は容易には判断できません。筆者にしても、長年(昭和39 (1964) 年以来)住みなれたハワイに関することなら、インターネット上に載せられている「ハワイ情報」が正しいものかどうか、殆どの場合判断できます。インターネット上には、ハワイに関する情報も玉石混交で、なかには大いに間違った情報も載っています。

 本書で、常に心がけたことは、各項目の執筆には、従来の知識や、いわゆる風説だけに頼らず、筆者の実際の経験に基づく事実や、真偽のほどを直接本人や関係者に問い合わせ、確かな情報を得ることでした。アメリカには、古くから「馬の口から直接得た情報」(straight from the horse’s mouth)という表現があります。これは、「馬の年齢や健康状態を調べるのには、その馬の口の中を見て、特に下の歯の状態を診れば、適格な情報が得られる」という競馬界での慣習を基にしている表現だそうです。馬主が所有している競馬馬の年齢を偽っていても、その馬の、特に下の歯を観察すれば、見慣れている人には、年齢が分かると言われています。*1 

 最後に、本書の執筆に当たってお話になった方達に感謝の意を述べさせて頂きます。先ずは、筆者が現役時代に日本国内で出版した多くの単行本の編集者島村栄一氏には、本書の全ての項目の草稿に目を通して、忌憚の無い貴重な意見を述べて頂き、多くの項目に最終的に加筆し、改善することができました。

 次に、早稲田大学卒業生により組織された同窓会「港稲門会」益子通夫会長、櫻井郁子副会長並びに牧原俊幸事務局長のご厚意により本書の草稿段階の項目を5回に亘り月刊ウェブサイトに掲載して頂きました。

 また、港稲門会会員で河合塾英語講師の木村智光氏には、同業の誼みで、ご多忙中にも拘らず、本書の前半部分をお読み頂き、丁寧なコメントや貴重なご意見を頂きました。

*1 Charles Earle Funk. 2107 CURIOUS WORD ORIGINS, SAYINGS & EXPRESSIONS, Galahad Books, 1993 (1948 by Harper Collins Publisher, Inc.), page 94.

   令和7 (2025)年8月14日

 アメリカ合衆国ハワイにて

           著者 黒川 省三 (Shozo Andrew Kurokawa)