4.1 英語のアルファベットには違った音を表すことが 多い
英語のアルファベット文字では、同じ文字が2つの違った音に使われることよくあります。例えば、c は accent 「アクセント」で [k], [s] の2つの音に、thの2文字は、thin とthisでは [θ] [ð]の2つの音に使われます。
長母音の [i:] などになると、amoeba, be, believe, Caesar, key, machine, mete, people, quay, receive, sea, see のように、なんと12通りの綴りで表される違った単語があります (小学館「英和中辞典」(Progressive English-Japanese Dictionary) からの引用)。
特に、上記の12の単語中の quay 「岸壁、埠頭」が[ki:] と発音されることを見ても、英語には他の多くの言語からの借用語が多いことが分かります。
4.2 音素とは音のクラスのこと
「音素とは音のクラス」 というだけでは、音素がどのようなものか理解できないと思います。もう少し詳しく説明すると、「音素とは音の最小単位」 とも言えます。つまり、各言語の母国語話者が 「単語の意味を区別する働きをする音声上の最小単位」 と考えられるものが 「音素」 です。言語学では、通常「音素」は / /、「単音」は [ ] を使って表記します。
少しだけ具体的な例を挙げて、英語の3種類の閉鎖音 (stop sounds) の音素がいろいろな単語でどのように使われていて、それぞれ意味を区別しているか 理解することができると思います。例えば、同じ音韻環境 (phonemic environ-ment) の / - in / の前に閉鎖音の / p, b; t, d; k, g / を入れると、それぞれ意味の異なる英語の単語として成立していることが分かります。それぞれの音が 「意味を区別する」 働きをしているということは、「音素の必須条件」 を満たしていることになります。
pin (ピン, 留針); bin (蓋つきの箱、容器); tin (錫); din (騒音); kin (親族); gin (古語 begin)
読者の皆さんも、上記のような方法で、英語でも日本語でも、いろいろな音素を簡単な同一音韻環境に入れて、各音素の正当性を調べてみては如何ですか。
4.3 アイスクリームを「アイス」とは、納得できません!
日本の英語からの外来語には、アイス キャンディー、アイス ホッケー、アイス スケートなどがあるのに、なぜアイス クリームを「アイス」と言うようになったのか筆者は納得できません。「アイス」と言うと、アイスクリームより「氷の塊り」、或いは「オンザロック」の「アイス キューブ」を想像してしまいます。アメリカの子供たちは、アイスクリームを食べる時に、語呂合わせを使ってジョークとして「私は叫ぶ、あなたも叫ぶ、そして皆んなで叫ぶ」と言いますが、正にそのような心境です。(英語は巻末のII.「参考英語資料」で参照してください)
注)「叫ぶ」は英語でscream(スクリーム)
4.4 The Bar とは「弁護士団」または「弁護士職」のこと
アメリカでは、弁護士団体や職業そのものを指してBar「バー」と呼称するのをご存知でしたか。全米の弁護士協会と言えばイリノイ州シカゴ市に在るThe American Bar Association で。各州にもState Bar Associationがあり、弁護士の公認資格を得るためには、州の Bar Exam (バーの試験)に合格しなければなりません。
では、なぜ弁護士職を The Barと呼ぶのかは、古くはイギリス英語(BE)からで、のちにアメリカ英語 (AE) にも使われるようになりました。語源は、法廷で「弁護士団と傍聴者を分けるために使用された「仕切り棒」に由来している」とのこと。弁護士たちは、仕切り横棒の内側で働いていたことから、弁護士全体をThe Bar と呼ぶようになりました。ちなみに、「酒場」をBar (バー)と呼ぶのも、客を酒樽が置かれているところから遠ざけるための「仕切り棒」からだとのこと。
4.5 アメリカの正月は元旦だけ
正月の祝いは、日本では一年を通して最も大きな祝いで、少なくとも三日間、人によっては七草までの7日間、或いは「何かと理由をつけて」15日まで引き延ばす人もいますが、アメリカでは、年が新しくなり、「一年が始まった」ことに意義があり、元旦だけを祝い、2日目からは通常通り働き始めます。もしも、元旦が日曜日に当たる場合には、翌日の2日は「振り当て休日」になり、3日が「仕事始めの日」になります。
アメリカの最大の祝いは、クリスマスで、日本の正月と同じように、長い休暇をとり、家族連れで故郷に帰るという習慣があります。
4.6 アメリカでは「サービス」は無料ではありません
日本では、英語からの外来語「サービス」は「無料」か「特価」という意味につかれていますが、アメリカでは意味が違います。日本の場合には、「これはサービスです」と言われれば、「無料」か「非常に廉価」で提供するという意味に使われますが、アメリカでは、「普通に提供する」という意味に使われる単語です。
日本の伝統的な喫茶店などでは「モーニング サービス」などという時間帯があって、「飲み物に軽食がついた朝食」が廉価で提供されますが、アメリカ人がこの表現を聞いたら、「朝、喫茶店で特別に行われるキリスト教の礼拝」などと解釈するかも知れません。 アメリカ人の生活では、「サービス」は「サービス ステーション」(ガソリンスタンド)や「サービスマン」(兵役従事者)つまり「国家に奉仕するために兵役に就いている人」と言う意味でも使われる単語です。
4.7 アメリカ人の呼び名はCVC
英語でCVC (子音、母音、子音)が代表的な音節として使われる証拠の1例として、アメリカ人の「呼び名」または「ニックネーム」があります。アメリカ人の言語習慣として、人名を短縮してCVCの音節組み合わせにするか、人名によっては、新しくCVCに置き換えます。少し例を挙げると、次のようなものがあります。
男性名の例
Daniel > Dan, Danny など
Donald > Don, Donnie など
James > Jim, Jimmy など
Richard > Rick, Richie, Dick など
William > Bill, Will など
女性名の例
Christine > Chris, Christie, Tinaなど
Elizabeth > Elly, Liz, Beth, Betty など
Katherine > Kat, Kate, Kathy, Katieなど
Patricia > Pat, Patsy, Trishaなど
アメリカ人は、それぞれ自分の名前を「どの短縮名」で呼ばれたいかを決めているので、各個人の意思を尊重する必要があります。多くのアメリカ人は「紹介された時」に 『私の名前は 〜です。〜と呼んでください』 と言うように紹介相手に伝えます。各個人の意思も聞かずに、勝手に、例えば 『自分はJames にはJimmy と呼びたい』 などと決めつけてしまうのは失礼です。ときには、James と言う人が 『自分は名前を省略せずにJamesと呼んでもらいたい』 ということもあります。
4.8 日本語の 「和製漢字」
本で造語された「和製漢字」と呼称される「漢語の一群」があります。明治時代に西洋文明が急速に日本に移入し、従来の漢語には無い概念や文化を日本語に翻訳して、適切と思われる漢字を当てる必要に迫られ造語されました。和製漢語の例を少し挙げると、つぎのような造語があります。
文化、文明、政治、経済、社会、科学、法律、自由、戦争、出版、放送、電話、機会、会社など
また、日本の風土、慣習などに合わせて造られた「和製漢字」も2,600以上あると言われています。少しだけ例を挙げると、峠、裃、躾、働などが挙げられます。
4.9 英語の「代表的な音節」は「子音 + 母音 + 子音」(CVC) 、 日本語は「子音 + 母音」
英語の「代表的な音節」はCVC で、日本語の場合は「子音 + 母音」
(CV) と言えます。子音で終わる音節を「閉音節」、母音で終わる音節を「開音節」と呼称し、世界中の言語を2種類に区別することもあります。
どこの言語でも、各音節には必ず1つの「母音」が含まれていることを認識することが肝要です。言い換えると、母音1つだけでも音節になるということです。
日本語を例に挙げれば、50音表の最初の列の「あ、い、う、え、お」は、それぞれ単独で1音節が形成されることになります。
4.10「メジャーリーグ」とは、「何を測る団体」だろうか?
日本語では、アメリカのプロ野球(MLB) を「メジャーリーグ」と言いますが、なぜ英語のMajor が「メイジャー」とならなかったのか不思議です。すこし英語を知っている人なら、「メジャー」は英語で measure 「測定、測るなど」という頻度高く使われている単語があるのに、それと区別せず、マスコミの誰かがあまり考えもせず、major を「メジャー」と言い始めたのか、いつの間にか「メジャー リーグ」に定着してしまったようです。「メジャー リーグ」とは「何を測る団体」なのだろうか。
4.11 英語の未来完了形と未来形の相違
英語には、全部で6つの違った時制がありますが、未来の出来事をあらわすのに2つの時制で表現します。基本3時制の1つの「未来形」は、
物事が現時点より先の「これから起こるか、起こらないか」を表すときに使う時制で、「未来完了形」は、「未来の或る時点までに完了しているか、完了していないか」を表すのに使う時制です。
「未来形」と「未来完了形」の例をそれぞれ「肯定文」と「否定文」を1例ずつ挙げると、次のような文例が考えられます。
(1)a. 明日は雨が降るでしょう。(未来形肯定文)
(1)b. 私は明日働きません。(未来形否定文)
(2)a. 私は今月の末にニューヨークへ行くと、全部で3回行ったことになります。(未来完了形肯定文)
(2)b. このプロジェクトは来月までに終わっていないでしょう。(未来完了形否定文)
4.12 日本語は「神仏」、英語は「家畜」に関する慣用表現が多い
日本語の慣用表現、又は諺(ことわざ)を少しだけ例に挙げると、次のようなものが直ぐ思い浮かびます。
触らぬ神に祟りなし
捨てる神あれば、拾う神あり(When one door closes another one opens.)
困った時の神頼み
馬の耳に念仏
仏の顔も3度まで
他方、英語では、イギリス英語 (BE) とアメリカ英語のどちらが基になっているのか定かでないことも多いですが、イギリス英語がアメリカへ渡り、開拓時代の昔には、家畜と共に働いた経緯もあり、牛馬、鶏などに関する慣用表現が多いといえます。少しだけ、筆者自身が時折使う慣用表現を例に挙げると次のような例が直ぐ浮かんできます。
「私は、これを馬の口から直接もらいました」(この情報は、本人から(または確かな筋)から直接得たものです)
「雄牛の両方の角をしっかり押さえなさい」(難しい問題には、逃げずに表面から立ち向かえ)
「馬を中流で乗り換えるな」(初心貫徹)
「馬の前に荷車を付けるな」(本末転倒)
「鶏が孵化する前に鶏を数えるな」(取らぬ狸の皮算用)
日本語と英語から1つずつ、それぞれ「似たような意味」によく使われているものを挙げると、次のような比較が可能です。
日本語の「捨てる神あれば、拾う神あり」は、英語の諺では「1つのドアが閉まると、他の1つのドアが開く」と同じ状態に使われ、英語の「鶏が孵化する前に鶏を数えるな」は日本語では「取らぬ狸の皮算用」になります。
(英語文はII. 「英語参考表現」参考 p. xx)