3.1 「これは、とてもユニークだ」

 時折、日本人もアメリカ人も「これは、とてもユニークです」とかThis is very unique. と発話したり、書いたりする人がいます。よく考えると、「ユニーク」”unique” は「唯一無二」のものなどで、それ以上に形容する必要のない「形容詞」なので、形容するのが誤りと言えます。この種の形容詞を「更に修飾、比較」できる通常の形容詞と区別して、英文法では

「絶対形容詞」(Absolute Adjectives) と呼称されています。

 この形容詞 unique (類の無い) は、日本でも、アメリカでも、ポスターなどに頻度高く使われる表現といえます。筆者自身そのようなポスターを目にしたことがありますが、一度はハワイの某レストランで「人知れず」そっとペンで書き直したこともあります。

 他にも、「完全な」(perfect; complete)、「不可能な」(impossible)、 数学などでよく出てくる幾何学的形状の「正方形、長方形、三角、円など」も同様で、それぞれ更に形容することができない単語です.

3.2 マンツーマンの教育

 日本語で英語からの外来語として「マンツーマン」という表現が使われていますが、「1対1」、「個人的」などと訳され、「1対1のキメの細かい指導」などのように使える表現といえますが、元の英語表現では「そのような意味」では使えない表現と言えます。

 英語の母国語話者の表現では、文字通り、「男対男」「男性対男性」の意味を表すのに使う表現で、『彼と男同士で話した』『息子と男同士の約束をした』などと両者が男性同士の時に使われ、相手が女性の時には使えない表現です。英語では、男性同士でも相手が女性の場合でも、「1対1で」「個人的に二人だけで」という時には “one on one” と言います。

3.3 言語音の2大別

言語音は、母音と子音の2つの種類に大きく分けることができます。子音と母音の大きな相違は、(1) 子音には有声音と無声音の両方ともあるが、(2) 母音には、原則的に無声音がなく、有声音だけだということです。無声音というのは、肺から出てきた息が咽の器官を通るときに、そこにある声帯を振動させない音のことです。つまり、声門が大きく開いていて、息が自由に通り抜けることができ、声帯の振動が起こらない場合の音なのです。声帯が軽く閉じられている場合には、そこを通る息が声帯の振動を伴って口または鼻の中に入っていきます。

 母音は、すべて口から出る音で、口中では舌の形と口の開き具合によって違った音になります。ところが、子音の場合には、舌先や舌の上部が口の中のどこかに触れたり (摩擦)、両唇によって息が阻止(閉鎖)されたりして発声されます。  鼻の中を通って発声される音は、英語でも日本語でも数が少なく、すべて有声音で、/m n ŋ/ の3音だけです。

3.4 日本語には1音節の単語が多い

 日本語は英語と比較すると、1音節の単語が多いと言えます。そこで、音節文字である50音を順に読み上げてみると、一般的に口語表現で使われている単語だけでも次のよう例が挙げられます。「い(胃)」,「え(絵; 柄)」「お(尾)」「き(木)」「く(九)」「け(毛)」「こ(子)」「さ(差), 「し(詩)」「す(酢巣)」「ち(血)」「て(手)」「と(戸)」などがあります。更に、文語表現を加えれば、その数はかなり多くなります。

 他方、英語では、アルファベット26文字がそのまま単語として使われるものは殆ど無く、I (私)と a (不定冠詞)ぐらいが例に挙げられるだけですが、表音文字の発音で考えれば、b [bi:] bee (蜂), c [si:] sea (海); see (見る) j [jei] jay (      ), t [ti:] tea (お茶), u [yu:] (あなた)などが考えられます。

3.5 ストロベリーはべりーではない

 アメリカでも日本でも、ストロベリー (苺)は代表的な果物で、生産も盛んです。いわゆるベリーと言われるものには、ストロベリー以外にも、  ブラックベリー、ブルーベリー、クランベリー、ラズベリーなどが直ぐに挙げられますが、他にもボイゼンベリー、マルベリー、グースベリーなどもあり、その数は数百にも上ります。

 ところで、これらの「いわゆるベリー」と呼称されているもので、植物学的には「ベリー属」に入らないものが数多くあることをご存知でしょうか。まず初めに、代表的な「ストロベリーがベリーではない」ということです。植物学的に「ベリー」とは、「一つの花の子房から形成される単一の果実で、果皮が肉質で多汁になり、複数の種子を包み込むもの」を指しているとのこと。(英語での定義はII.参考英語表現 p.zz をご  参照ください)

 なんと、植物学的には、きゅうり (胡瓜)、グレープ (葡萄), トマト、西瓜(すいか) などがベリー属の範疇に入る果実です。

3.6 台形と不等辺四辺形は英米で逆

イギリス英語(BE) では台形を trapezium と言うが、アメリカ英語 (AE) ではtrapezoid と言う。それに、不当辺四辺形はイギリスではtrapezoid,

アメリカでは逆にtrapezium と言います。なぜ、両言語で逆になってしまったのか、複数の説があるが、1つは英国の数学者チャールズ ハットン (Charles Hutton) が18世紀に出版した辞書で、「trapezoid を台形、trapeziumを不当辺四辺形」と誤って記述してしまい、その後訂正したが、アメリカでは、辞書の記載を守り続けたとのこと。

 この2つの単語の相違は微妙で、trapeze は、サーカスなどで「ぶらんこ」と呼ばれている「天井から吊るされた水平棒」と言う説と、ギリシャ語では「テーブル」という説もあります。また、trapezoidとtrapezium

の接尾辞 -oid は「〜の形に類似している」、-iumは「名詞化する」と意味があり、殆ど同様の意味を表します。そこで、両接尾辞には殆ど違いがなく、どちらを使っても同様の意味になります。BEとAEで、どちらを使っても大きな変化の無い厄介な単語とも言える例です、

 誤りを訂正せずに「強引に」使い続けてしまうのが「アメリカ人気質」なのか、「些細な問題」だから、どちらでも良いと考えるのか定かではないが、英米両言語で相違のある単語は未だ他にも「たくさん」あります。

3.7 日本とアメリカの国会議員数

アメリカの面積は日本の約25倍、人口も約3倍の国なのに、上院も下院も両方とも、日本の衆議院と参議院の議員数より少ないのをご存知でしたか?アメリカの下院議員数は435名、上院議員は100名に対して日本の衆議院議員数は465名、参議院議員数は248名です。つまり、日本の国会議員総数が713名に対してアメリカの議員総数は535名です。

 日本のように、「定数不均衡問題」で長い間裁判が繰り返されているのとは事情が異なり、アメリカ各州からの下院議員数は定数が1911年に535名と定められ、各州の10年毎に実施される国勢調査の結果、人口に応じて議員数が決められています。現時点では、最も人口数の多いカリフォルニア州からは52名、次にテキサス州38名、フロリダ州28名、ニューヨーク州26名で、人口の少ないアラスカ、デラウェア、ノースダコタ、サウスダコタ、バーモントとワイオミングの6州からは、それぞれ1名が選出されています。ちなみに、筆者が居住しているハワイ州は、他の6州アイダホ、メイン、モンタナ、ニューハンプシャー、ロードアイランド、ウェストバージニアと共に7州から2名ずつ首都ワシントンD.C. に送られています。その上、上院議員数は、各州の人口に関係なく、それぞれ2名が選出され、合計100名選出されるので、国会議員総数は両院合わせて535名と定数が決められています。

 また、アメリカの大統領は、日本で総理大臣を選ぶ制度とは異なり、先ず国民が選出し、各州の選挙人団が「最終的に承認する」という政治制度になっています。各州の選挙人団 (Electoral College)の定数は国会議員数と同じで、全国50州からの上院、下院合わせた535名にワシントンD.C,から3名を加え、合計538名です。この定数の過半数270名以上を獲得した候補者が大統領に選出されるのです。

3.8 クイズは小テスト

アメリカの大学教育の各クラスでは、通常1学期間に中間試験(Midterm Exam)と期末試験 (Final Exam)が行われ、教員やクラスの内容によっては、各課を終えた後に、学生の各科の内容習得をより確かなものにするために、教員の任意で事前に学生に伝えて「短いテスト」を実施することがよくありす。この「短いテスト」をQuiz (クイズ)と呼称しています。

 ときには、この短いテストを学生には事前に知らせずに、「不意に」実施することもあります。このような小テストを英語ではPop Quiz (ポップ クイズ), つまり突然「飛び出してくる短いテスト」ということです。そのような時には、教員がクラスがはじまると、『今日はポップ   クイズがあります』(Well, we will have a pop quiz today.) などと宣言してから始めます。

3.9 日本の省庁の英語名はイギリス英語 (BE)

現在の日本の中央省庁は1府12省庁ですが、これら省庁の英語名はアメリカ英語(AE) ではなく、イギリス英語 (BE)が使われています。例えば、厚生労働所はMinistry of Health, Labour and Welfareで、アメリカ英語ではLabor ですが、イギリス英語のLabourが使われ、国土交通省もMinistry of Land, Infrastructure and Transportで、アメリカ英語のTransportation ではありません。

 やはり、公式の名称には、本家本元のイギリス英語に基づいた表記にするのが妥当なのでしょう。

3.10 英語の時制には完了形がある

英語の時制には、日本語の時制に無い「完了形」があります。英語を習得するためには、先ずは、この完了形の概念を正しく理解することが肝要です。日本の学校英語教育では、一般的に「完了形」は完了、継続、経験を表すのに使う」などと定義されることが多く、多くの学習者は具体的になかなか理解できません。

 本書では、全ての言語表現を「6時制に分けて表現するのが英語」で、「2時制に分けて表現するのが日本語」だということだけを認識し、その他の定義を「忘れて欲しい」のです。そこで、完了形を3時制に分け、それぞれ「過去完了形」、「現在完了形」、「未来完了形」がどの時点に基づいて表現されるのかだけに焦点を合わせてもらいます。

 先ずは、「現在完了形」は「現在を時点にして、それまでに物事が「行われたか、行われなかったか」、又は「存在したか、存在しなかったか」を述べる時制で、「過去形」は「過去の或る時点までに、物事が「行われたか、行われなかったか」、又は「存在したか、存在しなかったか」を述べる時制なのです。そこで、両時制では、「同じ出来事」を述べることもできると言えます。

例えば、『私は、もう朝ごはんを今朝7時に食べた』と言う時には「過去形」を使い、『私は、もう朝ごはんを食べた』と言う時には、「現在までに」という意味合いを表しているので、「現在完了形」が使えるのです。(英語表現は、II. 参考英語資料 p.xx参照)

 次に「過去完了形」は、「過去のある時点前に、物事が「行われたか、行われなかった」、又は「存在したか、存在しなかったか」を述べる時制です。つまり、「過去の出来事」が2つある場合に、「より古い過去の事象を表すのに使うのが過去完了形」なのです。日本語で例を挙げると「私は、ドイツ語を勉強する前に、英語を勉強しました」などです。この復文では、より古い過去の出来事「英語を勉強した」を過去完了形で表現することになります。

 「未来完了形」については、文法が長くなると、退屈ですから、次の機会に回しましょう。

3.11 典型的なアメリカの家

 アメリカ人は、家の大きさを表すのに、よく寝室の数を言います。例えば、「4寝室の家」(4-bedroom house) などというのを耳にします。1軒の家には、通常夫婦のための「主審室」(master bedroom) と子供や来客のための寝室があります。伝統的には、12歳以上の子供には個々に寝室が与えられます。その上。殆どのアメリカの典型的な家には、リビングルームとダイニング ルーム付きの台所 (キッチン)があります。

 また、概して一般的な慣習として、主審室に付いているのがウォーキング クローゼット呼ばれる「押し入れ部屋」があります。そこには、夫婦の衣類などを吊るす横棒や物を載せる棚が両側に付いています。

 さらに、大きな家になると、リビングルーム以外にも、家族が一緒にゲームをしたり,読書をしたりして楽しめるデン (Den) (動物の巣穴)と呼称される小部屋が付いています。その他にも、ゲストルームやヘルパーの部屋がついている家もあり、邸宅(英語ではマンション)のレベルに近くなっていきます。

3.12 発音を表さないことが多い英語のアルファベット表記文字

 英語のアルファベットの「文字と単語の発音の関連性」を比較してみると、多くの矛盾が目につきます。少しだけ例に挙げると、 英語を外国語として学習する者が習い始めに、(1) 多くの「単語の語尾が e で終わっているのに、その文字は全く発音されない」ということを経験します。come 「来る」、make 「作る」、wake 「目を覚ます」などです。この 矛盾は、英語の母国語話者にとっても、最初に経験する問題です。

 卑近な例で恐縮ですが、筆者の末の孫が幼稚園児だった時に、come を勝手に cumと綴っていたことを今では懐かしく思い出します。たぶん、日常生活で目に触れていたchewing gum 「チューインガム」 からの類推表記だったのでしょう。一般的に、英語の母国語話者の英語の綴りは、小学校5,6年生になるまでは、「英語のできる日本人」 には想像できないほどの 「ひどさ」があると思います。筆者などは、かなり長い間、この孫娘が 「果たして英語のスペルができるようになるのか」 心配になったほどです。しかし、結果的には、この孫も小学校5,6年生になった時には、驚くほどの速さで英語の綴りを習得していました。

  他方、日本語の表記文字の場合には、各音節の読み方が決まっていて、小学校1年生でも、文字を覚えれば、主語を表す場合には 「わ」と発音するのに、「は」の文字で表すなど少しばかりの規則を習得すれば、ほとんどの表現が表記できる便利さがあります。

 なお、表記法で両言語の子供たちが苦労するのは、日本人の子供の場合は、何といっても、2,000字ほどもある漢字の習得で、アメリカ人の子供の場合には、単語のスペル習得でしょう。日米両国の小学校児童の学校の宿題も「漢字習得」と「スペル習得」が頻繁に行われます。